闇に生まれし者


 

闇の中に、一陣の光。

 

空が裂ける。現れるのは、夜の闇よりさらに深い漆黒の闇。

やがて、魔が現れる。

現れるのは恐怖か、安堵か、絶望か。

 

体長、私より低い。

武器、鈍器のみ。

容姿、ほぼ人型。

「コボルト。問題無い、排除する」

 

 

麻帆良学園、中等部校舎横に存在する森の中。夜は世界の存在を拒絶するかのように

人に対してその口を閉ざす。

 

人を拒絶するかわりに、闇は魔を受け入れる。


彼女、ザジ−レイニーディは、一人そこに立ち、虚空を見上げていた。


彼女を狙う魔の者は、一日ごとに現れる。学園の結界のおかげで、

上位の魔物は入ってこれない。

学園に入ってから、通算121回目の戦闘。

小さく息を吐き、魔を見つめる。

 

地面に倒れこんでいたそれは、震えながら立ち上がる。胎動。

やがて、標的を見つけると、手にした武器を構える。そして、動き出す。

ゆっくりと、迫る。

 

動き、極めて緩慢。

注意力、散漫。

特殊能力、無し。

 

 

全て把握。

 

 

「el tuerate mariaraiza…reider」

構えた手から、光。

まっすぐに魔に向かう。

狙いは武器。腕を弾かれ、棍棒も弾けて飛ぶ。狼狽する魔物。

 

 

次の瞬間、ザジは後ろに回りこんでいた。


「ギ…」


「遅い」


ザジは魔物を羽交い絞めにした。魔物は抵抗するが、からまった腕は動かない。


静かに口を開く。


「el tuerate nihurame…innelre」


魔物の体が光る。ザジを中心に発せられた光が、腕の中の魔を包んだ。


魔物は光の中に静かに溶けて消えた。

 

 


浄化の光。低級の魔物なら、これで十分。

「…終了」

再び虚空を見つめる。一筋の光も射さない深い森の闇は、月と星の光すらも拒絶し、

圧倒的に存在する。

「ここが…、私の生きる場所」

光の中にいても、闇を見ている。

寂しくなんかない。後悔なんかするものか。私は望んでここにいる。

 

再び一陣の光。

空が裂け、闇より深い漆黒の闇。

二匹目。こんな事は今まで無かった。

警戒する。空気が寒い。悪寒。

 


やがて、絶望が姿を現す。

 


ザジを書くにあたって、難しかったのは性格付け。なにしろ台詞が原作でもほとんどないので、

文だけでは難しいと思ったんですが、そこはあえて挑戦。

性格はわからなかったので、たまたま今はまっている「涼宮ハルヒの憂鬱」

の長門をモデルにしてみました。

 


 

 

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