第2話 世は全てこともなし
「まったくあなたという人は!あれほど軽率な行動は慎むようにと言っておいたのに。もし二人がこなければ今頃…」
バアンという机を叩く音が響く。シスターシャークティのお説教の時間が続く。
「えー、だってもし私達が行かなかったらあの人死んでたしー、結果オーライってことでいいんじゃないすかあ?」
美空が答える。こういうやりとりも久しぶりだ、と感慨を持って。
「…話が進みませんね、シスター美空、後で私の部屋に来るように。では美空、任務を述べなさい」
「うへえ…、春日美空及びココネ両名、アジア支部長弐集院氏よりの書状、届けに参りました…ってあれ?」
シスター着の隙間、カバンの中、財布の中…無い。
「シスター美空、あなたまさか…」
「あは、あはははははははは」
空気が怒りに満ちる。美空は空を見上げた、しかし、ここは室内だった。
『最後にもう一度、空を見たかったな…』心の中で美空はつぶやいた。
「あの、もしやこれの事では?先ほどの事件現場にあったのですが」
「おおそれだ!刹那さんナイス、助かったよー」
「確かにこれのようです。命拾いしましたね、シスター美空」
『って本当に殺る気だったのかよ…』心の中で美空はつぶやいた。
「シャークティー支部長、内容はどんな物ですか?」ネギ君が答えた。うーん、見た目だけじゃなくて声も大人っぽくなってるなあ。
「大した事ではありません。最近の魔の者の出現具合の増加に伴なう新しい対策です」
シャークティーが答える。あたしの命と天秤にかけられた書類を大した事無いと言い切ったよこの人。
「なにはともあれお疲れ様でした、二人とも。ココネはゆっくり休んでください。美空は残りなさい」
「うへええ」
「美空さん、お疲れ様です。後でゆっくり話しましょうね」
「むこうの事もいろいろ聞かせてくださいね、後で」
「ちょ、二人とも助けてー」
「美空さん変わってませんねー」コーヒーを飲みながら、ネギ。
「ふふ、5年ぐらいでは人はそうは変わらないものですよ」刹那。
「僕達は卒業してすぐこっちに来ましたからね。久しぶりにみんなに会いたいなあ」
「先生、誰に会いたいのですか?明日菜さん?それとも楓?」いじわるく刹那が聞く。
「い、いえ、誰と、という訳でなくみんなとですね」
「ふふ、わかってますよ。皆に会いたいのは私も一緒です」
笑顔。見惚れる。パートナーの契りを交わした、この人の。
「……」
「あっ、ココネさん。どうしたんです?」
「……さっきからずっと、気付かなかっただけ」
二人はちょっと顔を赤らめた。ココネは意に介さず続ける。
「ネギ・スプリングフィールド、すぐに私の部屋へ来なさい」
「?」
「シャークティからの伝言、そのまま伝えた」
用事が終わるや否や、きびすを返してココネは帰った。
「何だろう」
「先生、私も行ってはいけないでしょうか」
「どうしたんです?」
「いえ、ちょっと胸騒ぎが…」
「刹那さんの予感は当たるからなあ…いいえ、僕だけで行きます。大丈夫ですよ」
5年間、騒がしくはあるが静に回っていた世界。ネギは今の時間が、世界が好きだった。
胸騒ぎ、それはこの時間の終わりを告げる、小さな鐘の音だった。
えー、すべて一発書きです。
下書きとかあんまりしないたちなので…今後の展開もほとんで決まってません。
週一編ぐらいのペースでアップしていくつもりです。