それは、5年後の物語





200X 10/20 France Marceille


「おおっ」

「……」

港町に、場違いなシスター服の女性が二人。

「ひゃースゲエスゲエ。ここがマルセイユかー。さーて、本場のブイヤベースでも…」

「ミソラ…」

「わかってるって、ココネさん。でも、36計食べるにしかずっていうことわざあるじゃない?

まずは腹ごしらえといこうよ。あ、あそことか流行ってそうじゃない?」

「…(ため息)」

わかってるって、ココネさん。

私たちがここに来たのは、シスターシャークティに会うため。もちろん任務だけど、それ以上に

私たちが会いたがってるから。

「久しぶりだよねー。元気かな?あたしに会えなくて寂しがってたりしてー」

「シャークティー、ミソラと違う」

「何が言いたいのかなー、ココネさん」


踏む地面が違っても、吸い込む空気が違っても、いつもと変わらない会話、いつもと変わらない世界。



「ミソラ…あれ」


「んー、やれやれ。今からお食事タイムって時にねえ、因果な商売だよ、まったく」

リッチー、クラスAの魔物。人に紛れ、人を狙う。

「セオリーどおりにいけば、上に連絡して応援を待つ、ってパターンだよね。あたしらの手に負える相手じゃないし」

「…」

その時、対象が動く。ターゲットが定まったようだ。

「ミソラ…」

「…。しゃーないか、とりあえず支部に連絡して追跡しよ。話はそれから」

同じく人に紛れ、追跡する。ターゲットはじょじょに路地裏へ。おそらく狙い通りだろう。

ターゲットとの距離 5m。ターゲットとリッチーが接触する。

「ラ・トラウス・バリウス!」ココネの呪文と共に、魔物の体に魔方陣が刻まれる。緊縛の呪文、

通常の魔物なら逃れる術は無い筈…、さて、どう転ぶか。とりあえずターゲットを保護して、様子を伺う。

「…!」

魔方陣が消える。魔物が振り返る、ターゲットは切り替わり、ココネに悪意が向かう。

「ココネっ」

ココネの体が宙を舞う。緊縛は解かれ、魔物は開放される。やばいね、これは。

呼吸を確認…、意識もある。けど…、状況はあまり良くないね。二人かかえて逃げるほどの余裕も無いか。


覚悟を決めて、悪意と向かい合う。死んじゃったら、労災降りるのかな?

おーおー、そんなでっかい火の玉作っちゃって…、人が来たらどうするつもりだよ。一緒に消せば問題無しってか。


「ふー…」


少しだけ、空を見る。美しい空、父さんにもらった名前。名前のせいもあってか、やな事があった時は決まって空を

見上げていた。最後に見る空が、きれいな蒼で良かった。





…その時、思ったんだ。よくあるじゃない?悪者が出てきたら都合よくヒーローが現れて

悪者を退治するってやつ。現実はそんなにうまく出来てるわけない、と冷めて見てた覚えが

あるよ。でも、今思ったんだ。そういう場所に、そういうタイミングで現れることができる

という事が、ヒーローの素質なんじゃないかってね。いくらすごい力を持ってても、使いどころ

が無かったらどうしようも無いわけじゃん。そう思った。



「私が前に出ます。先生は援護と一般人の保護を」

漆黒の髪を靡かせて、見覚えのある女性が舞う。不意を付かれた魔物は、反撃できない。

一太刀、魔物の腕が落ちた。

「暗き闇より訪れし者よ、あるべき所へ帰れ…LA STER MA STER MAGISUTER 光の螺旋!」

見覚えの有る杖を持った、見覚えのある男の子…、いや、もう紳士だな、立派になったもんだ。

一瞬の目がくらむような光の後、魔物は完全に消え去っていた。


「あれ…、美空さん、ですよね?」

「美空さん、どうしてここに?」


「へっへー、お久しぶり、ネギ君に刹那さん」



それは、5年後の物語。

 


年単位で更新してなかったような気がしますj…。
復帰第一弾という事で、前々から言ってたような気がしないでもない
続き物です。今の麻帆良学園から5年後の世界、っていう設定で。
まあ、続くとは思いますが…。
ちなみにこの世界ではネギのパートナーはせっちゃんです。


 

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